潰し合う女たち
【第3話】回春嬢の無差別テロ(前編)
私が働いている風俗店はいわゆる“ヌキ”ありの出張型マッサージ店です。オプションNGにすれば脱がなくてもいいですし、普通の風俗店よりは性病の心配もほとんどないので続けられていました。女の子もバリバリの業界っ子というよりは昼間はOLだったりアパレル関係の仕事だったりと掛け持ちの子がほとんどでした。見た目も派手な子は全然いなくて本当に普通の、割とおとなしいタイプの女の子が多いです。そんなお店なのでお局的な存在もなくマイペースに仕事ができていました。
しかし、働き始めて半年が過ぎたころ、小さな事件が多発するようになりました。持ち歩くオイルの中に洗剤のようなものが混入されていたり、ある女の子はお客さんのところでバスタオルを広げたらゴキブリの死骸が出てきてお客さんに追い出されて泣いていました。
私もパウダーに水が混入されていて使い物になりませんでした。
もちろん、従業員には報告していましたが、店舗型とは違い女の子の出入りも多く、人数も40人ほど在籍していたので、犯人の特定が困難でした。
「聞いてよ、ローションにハッカ油入れてあったんだけど!! お客さん悶絶しちゃってさ、もう大変だった。ありえない」
アミがイライラしながら待機室に戻ってきました。
「ハッカ油とかよく考えるよね、つーかほんと意味わかんないわ」
アミと私がそのことについて話していると、周りにいた10人くらいの女の子たちが、次々に「私もやられました」と挙手してきたのです。その光景に恐怖すら覚えました。もしかしたらこの中に犯人がいるかもしれないのです。
それぞれ何をされたかを聞くと、化粧品が盗まれたり、お金が抜かれていたり、タオルにコーラをかけられていたりと内容はさまざまでした。
「これって、まさに無差別テロだよね。誰かを陥れたいとかいじめとかそういうんじゃなくてさ」
「そうだね、誰でもいいから困らせたいってやつだね。店長も真剣に犯人探してくれればいいのに」
ここまで被害が出ている中、従業員はあまり動いてはくれずにしばらく無差別テロは続きました。これまで以上に個人で気を付けるようにはしていましたが、ちょっと気を抜くとやられてしまいました。
私は犯人を掴まえたい気持ちもあり、出勤をしばらく週5にしました。待機室で女の子たちを観察しながら犯人を探っていました。
すると、新人の女の子が出発する前に仕事バッグを確認している最中、「きゃあああ!!」
と大きな声を上げました。