恋の花びら大回転

【第17話】シンギング手袋
先日知り合った40代のサラリーマンの男性、スーツなのに何故か黒い皮の手袋をしていたんですよ。指なしタイプの。
車やバイクが好きな人なのかなと思ったら別にそういうわけでもないらしい。じゃあなんで? チャゲなの? 殺し屋だってそんなものつけませんよ。指紋つくし。それとも呪われし闇の紋章でも封印してんの?
いろいろ聞きたいけど、なんか茶化しにくいオーラをまとっていたので、とりあえず
「その手袋かっこいいっすね!」
と言ってみたら、そのサラリーマン「いやーハハハ」と髪をかきあげ、すぐ外してました。せっかく褒めたのに!!
30秒に1回は髪かきあげるし、微妙に話聞いてないし、なんかこの人絡みにくいな…と思いながら話してると、急に「○○って曲知ってる?」と何の脈絡もなく聞いてきた。
「あっ、わかりますよ。●●の曲ですよね!」
音楽の話なら世代も近いし盛り上がれるかもしれない!と思って食いついたところ、その○○って曲を歌い始めた。
それがそのー、なんていうんですか。V系っぽいっていうか、自分に酔い過ぎっていうか、正直に言うと超絶気持ち悪い。
「きぃみぃぅをぅ~」
「あっ、そうそう、その曲ですよね!」
「つきゃまぅえとぅえぃ~」
「昔、ドラマの主題歌に使われてましたよね」
「いくしぇんの?ほぉしを~」
「あー…いい曲ですね…」
「くぉえてぇ~~~~!!!(熱唱)」
わかったから話聞けよ。
どうやらお酒が入ると歌いたくなるタイプらしく、その後も「○って曲知ってる?」「○○○は?」と曲名をどんどん出し、私が知ってるかどうかに関係なく全ての曲を2番のサビの直前まで歌ってた。
すぐ隣の席に他のお客さんいるのに、でかい声で歌ってるからすげー迷惑だし恥ずかしい。
そもそも下手な歌を長々と聞かされて私も不快度100%なんですけど、目の前の女がすげー嫌そうな顔しててももちろん気がつくはずもなく、チャゲリーマンの熱唱は続く。
そもそもこの人「突っ込めないタイプ」なので「なげーよ!」とも言いにくい。3曲くらい続けて歌って得意げな顔してるので、
「うまーい(棒) カラオケ行けばいいのにー」
と言ってみたところ、「カラオケは音質が悪くて歌う気になれないし、長年バンドのボーカルをやっていたので生演奏でしか歌いたくない」とのことでした。
あっ、もしかして指なし皮手袋ってバンドやってましたアピールだった!? ごめん、ただのダサい人だと思ってたわ。
今後、車やバイク好きじゃないのにチャゲ手袋をつけてる人がいたら、歌い出さないうちに全力で逃げようと思います。

藍川じゅん
元ピンサロ嬢。アダルト誌にてコラム連載中。著書『大好きだって言ってんじゃん』(メディアファクトリー)が好評発売中!