恋の花びら大回転
【第122話】「お風俗文学館4」前編
長きに渡って連載させていただいた「恋の花びら大回転」も残すところあと1回!
最後は、以前から「お風俗文学館」でご紹介したかった田房永子さんの「男しか行かない場所に女が行ってきました」(イースト・プレス)のお話をさせていただこうと思います。フィナーレを飾るに相応しい、風俗レポの傑作です。
田房永子さんと言えば、支配的で過干渉な母親との葛藤を描いた大ヒット作「母がしんどい」(中経出版)の著者。「毒親」という言葉が社会現象にもなり、母親からの支配に苦しんでいた多くの女性たちの救いとなった名著です。
「母が…」のような母娘の問題を扱った本だけでなく、ジェンダー問題に切り込んだ名作もたくさんあるので、ぜひ全部読んでください!
さて、今回ご紹介する「男しか行かない…」は、田房さんがエロ本でレポート漫画を描いていた頃のお話。
男性向けに書かれた「可愛い子にこんなサービスされてウヒョヒョ!」という風俗レポとも、現役風俗嬢が書く「こんなお客さんがいて困りました!」的な日常コラムとも違う。現場の男女の様子を第三者として観察し、性産業の背景にある男性社会の仕組みや価値観、それによって強いられる理不尽さや虚しさを、冷静に指摘しています。
AV、オナクラ、出会い系、DVD個室鑑賞ルームなど、さまざまな性サービスや性交渉の現場の様子が描かれる中、おっぱいパブの話も出てきます。
田房さんは、おっパブの特徴として「仕事相手の人たちとカラオケ感覚で入店できる」ことを挙げています。男性たちは、おっぱいを目の前にした時のリアクションをお互いに見せ合い、ふざけあうことで親睦を深めているのだとか。そういえば、ピンサロでも会社の先輩後輩たちがワイワイ来店し、はしゃぎ過ぎて黒服に怒られていることがありました。おっパブでも同じ現象が起こるようです。
それについて、田房さんは「男は同性とのコミュニケーションを図るためにわざわざ女の体を必要と」し、そのことに罪悪感を感じてハッスルできないでいると「男たちから『ノリが悪い』とされ」、「輪から外れてしまう」。そうならないないために、「『娼婦』的女性と、『自分の妻・娘』的女性を、別のものと分けて考える傾向が強い」と、田房さんは分析します。
あるあるある。女を介してのホモソーシャル。男が男とイチャイチャするために、あるいは男が男に気に入られたいがために、わざわざ間に女を挟む時のあの「利用されている」感。プロとして働いている時は「私で盛り上がってもらえるならば!」と頑張ってお仕事に徹しますが、時給が発生していない時でも、女というだけで「娼婦」的役割を押し付けられることが多々あり、モヤモヤします。
怒りにまかせて、後編に続きます!
藍川じゅん
元ピンサロ嬢。アダルト誌にてコラム連載中。著書『大好きだって言ってんじゃん』(メディアファクトリー)が好評発売中!